恋口の切りかた

彼女は相変わらず男の格好でウロウロしていたが、

最近は、町でもすれ違った男どもがいちいち振り向いてくる。


はかなげで可憐(かれん)な少女の男装は独特の妖艶(ようえん)さを漂わせているようで、

華奢(きゃしゃ)な体つきからは想像のつかない剣の達人であるという噂(うわさ)もまた男ウケしていて、


あの格好にあの美貌で微笑まれるとたまらない、ともっぱらの評判だ。


そんな風に男どもが騒(さわ)いでいるのを聞くたび、最近俺はなぜかイライラして、どうにも落ち着かない気分になる。



そんなでワケで


今も物売りと話しこんでいる留玖を見て、
俺は意味もなくあわてて声をかけた。


「何やってるんだ?」
と、言いながら足早に近づくと、

「エンちゃん」

留玖が可愛らしい仕草で振り向いて俺の名を呼んだ。


「ちゃんはやめろ、ちゃんは。子供じゃねーんだし」

「うん、エン」

ぶっきらぼうに言った俺にうなずいて、留玖が言い直し──


「お稲荷様が、化けて出た」

物売りを指して、彼女はワケのわからんことを言った。