恋口の切りかた

ちなみに凶器の刀は堀口が投げ捨てたものか、城下を流れる小川の中から発見されたのだそうだ。


大河道場の門弟でもあった彼をよく知る者は、

「まさかあの文七郎が、五人も斬り殺すほどの実力の持ち主だったとは」

と驚いたという。


そして伊羽邸で詮議を受けていた堀口の口から語られた黒幕の名が、仕置家老の雨宮様だった。


仕置家老と言えば国の執政を行う御家老様だから、城代家老の伊羽様にも引けを取らない立派なご身分だ。

雨宮様と伊羽様は城内でもつね日ごろからよく対立していたようで、それがまた話に真実味を持たせたようだ。


雨宮様は言いがかりだ、伊羽様のでっち上げだと不服を申し立てたらしいけれど──


うそかまことか、雨宮邸で伊羽様暗殺の密談が交わされていたと奉公人が言い出したりして、


現役の家老職にある者ということで、
事態を重く見た殿様や先法三家は結局、雨宮様に切腹を申し渡したのだった。


雨宮家は伊羽家と同様、代々家老職を務めてきた名家なのだそうで、

そのおかげと、そしてなぜか被害者である伊羽様の口添えがあって、お家断絶だけは何とかまぬがれたものの、

事件が事件なだけに、厳しい減石(げんこく)処分が下された。


一方、

事情を知らず、寝耳に水の下手人の父──堀口新右衛門のほうはと言うと、

息子がとんでもないことをしでかしたと青くなって、やれ自分も切腹するだのなんだのと大さわぎだったらしいけれど、

大河様と、そして父上が何とかそれを止めて、
堀口家には一ヶ月の閉門が言い渡されたのみで、特にお咎めなしだったということだ。