恋口の切りかた

「これは儂も気がつかなかった。返り血をよけきれなかったか……。

いやはや、伊羽殿の言葉ではないが、大したものだ」


──返り血、だと?

いったい、誰の……。


「漣太郎、留玖、よくやった」


親父殿はそう言って、まだ何かにおびえているような表情の留玖の頭をポンとたたいた。


「留玖。よくぞ、りつを守ってくれた」

「────」

「お前は、りつの命を救ったのだ。
去年の大晦日もだ。お前は家族や村人の命を救った。

責められることをしたのではない、ほめられるべきことをしたのだ。
胸を張っていればよい」

「あ──」

「よくやってくれた、留玖。礼を言うぞ」


はりつめていた何かが決壊したように、留玖の顔がくしゃくしゃにゆがんだ。


「あ──私……私は……っ」



うわあああ──! と、声を上げて、



留玖は親父殿にしがみついて泣きくずれた。