恋口の切りかた

「父上は、今宵何をなさっていたのですか?」


留玖が何を言い出したのか、俺にはよくわからなかった。


「本当に、伊羽様のお屋敷にいらっしゃったのですか?」


え──?

おいおい、そりゃどういう意味だよ、と俺が聞き返す前に、留玖は俺がまったく気づきもしなかったことを口にした。


「お召し物に、血が……」

驚いて、俺は留玖が指さした親父殿の着物を見た。

胸のところにぽつりと、小さな黒い染みがあった。


どう考えても、この部屋に入ってからついたものではない。


くっくっく……と、
親父殿は実に楽しそうに、
うれしそうに、

笑った。