恋口の切りかた

硬直している俺に、やはり見えない視線を注いで、

家老は「私には味方が少ないもので」と言った。


「漣太郎殿、覚えておかれるがよい。家中とは狐狸(こり)がうごめく魔窟(まくつ)のようなもの。

ゆえに私は、自分が見こんだ者以外は信じないと決めている。

元服のあかつきにはどうか貴殿も、『父君のように』私にお力を貸していただきたい」


この得体の知れない男の真意がさっぱりわからず、俺が返答できずにいると、

「愚息(ぐそく)と昵懇(じっこん)にするのはかまわんが」と、親父殿が割りこんだ。


「家老と先法三家の結びつきは快く思わぬ者も多い。ゆめゆめ気をつけられよ、伊羽殿」

「ああ。まあそこはうまくやりますよ、結城殿」


そんな会話を交わして、覆面の城代家老はくるりと背を向けた。