【剣】 耳元で、円士郎に「お前に溺れてる」なんて囁かれたら、私はもう何の抵抗もできなくなって、 されるがままに身を任せて── 護衛の人たちには悪いけれど、 私も、円士郎と二人きりで過ごす甘い時間の魅力には勝てなかった。 そうして護衛の人たちを最後まで振り切り続けて、 私と円士郎が国に戻ったのは、江戸を発って丸々半年が経過した十月上旬のことだった。