「は……?」

円士郎が動きを止めた。

「おいおい、そんなのもうお前、知ってるだろ」

恐る恐る瞼を開けると、キョトンとした円士郎の顔があった。

「し……知らないよぉ」

「だってお前、奥に上がってた時──」

円士郎が勘違いしている様子でそう口にして、私は慌てた。

「わ、私……左馬允様とは何にもしてないからっ」

「へ?」

「に、逃げたの」

「逃げた?」

「え、エンじゃなきゃ駄目で……エンじゃないと嫌で……

私、御殿の中を逃げちゃった……」


私が半裸で走り回ったことを告げると、円士郎は目を丸くして、

それから私の上でヒクヒクとお腹を痙攣させて笑った。

「そいつは──あいつも災難だったなァ」

円士郎は可笑しくて堪らない様子でそう言って、

「本当にお前って、時々何やらかすかわかんねェ女だよな」

目を細めて私を見つめて、「そっか、まだ誰のモノにもなってねえのか」と呟いた。


「だったら──これから俺が教えてやるよ」