恋口の切りかた


 【剣】

円士郎の口から、私を一人江戸にはやりたくないという言葉を聞いて、

私の脳裏には、いつか初姫様と交わした会話が蘇った。


私はもう、
寒い雪の晩に、彼の手にすがって救われて、
彼に守られてばかりで生きてきた少女じゃない。


彼のことが本当に大切だから。

私も彼の力になりたい。


いつでも私の幸せだけを案じて、正室にするか側室にするか選べないと言ってくれた愛する人のために、

私にできることをしたかった。


円士郎のお嫁さんになりたい。

その思いは今も変わらないけれど、

ずっと告げることのできなかったその言葉を、確かに彼に伝えることができただけで、私はもう幸せだった。


ずっと私を守ってくれた人のそばで、一生この人のために生きたいとそう思って、


舞い散る夜の桜の下で、

私は、円士郎の側室にしてほしいと口にした。


望みを手放しても、不思議と悲しくはなくて、

全てを失って、たった一つのこの望みを大事に抱き続けてきたかわいそうな少女も、私の選択に笑ってくれたような気がした。