恋口の切りかた


 【剣】

桜の中にに立ったまま、しばらく円士郎と無言で見つめ合って、

「エン、その格好……なあに?」

私はボッサボサに乱れた円士郎の頭と、あちこち破れた着流しを眺めて思わず尋ねた。

いったいここに来る前に何があったというのか、円士郎は全身ボロボロの姿だった。


「う……!? こ、これはその──お前が縫ってくれた着物を着て来るって、約束だったからだな……」

「ふえ?」


私は円士郎が着ている小袖を穴が空くほど眺めた。


ほとんど原型を留めていないけれど、
言われてみれば、それは見覚えのある生地で──


──うそぉ……!?


「なんでっ? そんなことになってるのっ」


ボロ布のようになってしまったかわいそうな着物に、私は衝撃を受けて叫んだ。


「わ……悪ィ……ちょっと城を抜け出すのに手間取っちまってよ……」


円士郎がしどろもどろになって、


「で、でも! 破れたらお前がいくらでも縫ってくれるって言っただろ!」


焦った様子で怒鳴った。