恋口の切りかた


 【円】

くそ……!

青文の野郎、手加減ナシでかかってきやがって──


俺は日が傾いた空を見上げながら、武家屋敷の界隈を全速力で走っていた。


さすがに青文は強かった。


あの後、

彼の容赦のない鋭い突きをかわし、
振り回される竹の棒をさばいて、

相手の獲物が獲物だったこともあって、
何とか竹の棒を斬り飛ばしてやるところまでこぎ着けたが、

その頃には他の家来がわんさと集まってきていて、追っ手を振りきって城中を逃げ回り──


ようやく城を抜け出したが、こんな時間になってしまった。


約束の場所までは、まだたっぷり一刻はかかる。

留玖、俺が着く頃にはもう、帰っちまってるんじゃねえかな。


焦りながら、白壁の塀が続く道を走って、


俺が足を止めたのは、武家の菩提寺がある寺の前だった。