恋口の切りかた

「お化粧の仕方を教えてほしい?」

顔を真っ赤にしながら頼んだ私を見て、りつ様は目を丸くした。

私は女中たちに手伝ってもらって、
母上にいただいてから一度も袖を通していなかった一番上等の女物の着物を着て、髪も綺麗に結って──

円士郎がくれた銀の桜のかんざしを差して、りつ様の離れを訪れたのだった。

「わ……私、お化粧なんて、したことなくて……りつ様は、いつもお綺麗だから……」

もじもじしながら言うと、りつ様は花のように頬をほころばせて笑った。

「留玖殿はお若い故、化粧などしなくても十分お綺麗じゃ」

りつ様はそう言って、
それでもお化粧の道具を出してきて、
薄化粧を施してくれて、
最後に、私の唇に薄く紅を差してくれながら、

「今日は、そのかんざしをくれたと言っていた、好いた殿方とお会いになるのかの?」

と尋ねた。

「……はい」

私が下を向いてこくりっと頷いたら、りつ様は鈴を転がすような声でころころと笑って、


「それは、円士郎様でありんすか」


と、私の愛しい人の名前を口にした。