恋口の切りかた


 【剣】

大好きな花の舞い散る川縁の土手を、花見客を横目に見ながら、私はとことこ歩いていた。

空は穏やかに晴れて、うららかな春の日差しが降り注ぐ午後だった。

風に乗って、
ふうわり、ふうわりと花びらが飛んできて、甘い春の香りと一緒に鼻先をかすめてゆく。


ずっと前に、与一から教えられたように気をつけながら足を動かして歩いて、それでも歩きづらいなあ、なんて思って、


桜の木と花見客とが途絶えようかという辺りまで来た時のことだった。


土手を駆け上がって、二、三人の男が私の周りを囲んだ。


花見のお酒に酔っているのか、赤い顔をした人たちは皆、人相が悪くて、

私には見覚えがあった。


「おう、綺麗なお嬢ちゃん、一人でどこに行くんだ?」

「この先にはもう、桜の木はねえぜ?」


私に向かってそんな風に話しかけてくる人たちは、虎鶫の銀治郎親分さんのところの若い衆だ。


こんにちは、と笑顔で挨拶をしようとしたら、


「こっちに来て俺たちの酌をしろよ」


いきなり、男の一人がつかみかかってきて──


私はとっさに、その人の腕をつかんでねじり上げた。