恋口の切りかた

「てめえら! この着物に傷一つでもつけたら切腹させるからな!」

ヤケクソ気味に飛びかかってくる家来たちを次々に峰打ちにぶっ叩いてやりながら、俺はそうわめいた。

ちなみに今の俺は、品の良い柄の着流し姿に下駄という格好である。


「い……伊羽様ぁ……」

俺に叩きのめされた侍が、情けない声を上げて青文に助けを求めた。

「達人の殿が相手では、我らでは手に負えませぬぅ……」

やれやれというように御家老は頭巾の頭を振って、

庭木の間に落ちていた、ちょうど槍ほどの長さの竹の棒を拾い上げた。

「おい待て。なんでそんな所に都合良く竹の棒があるんだよ!」

俺は思わずツッコミを入れて、

「このようなこともあろうかと読んで、私が仕込んでおきました」

青文はしれっと有り得ないことを口走った。


嘘つけ!


「後で庭師に文句を言ってやる!」

家来たちをあらかた叩きのめした俺は、刀を構え直して、

「あんたとはまだ、やり合ったことがなかったな」

と切っ先を槍術の達人に向けた。

「いいぜ。いつか勝負してえと思ってたところだ!」

青文が再び大きく嘆息して、手にした竹の棒をビュッと一振りして構えをとった。

「聞き分けのない子にはお仕置きが必要だな」

「はっ! やってみな!」

ほえて、薄紅色の花びらを蹴散らし、俺は青文に向かって大地を蹴った。