恋口の切りかた

「な──何の真似だ、こりゃ?」


突然の出来事に、円士郎が唖然とする。

私も、あんぐりと口を開けて目の前の出来事を眺めていた。



「我が国は氷坂家の所業を訴えて幕府の裁定を仰ぐことにした」

口を開いたのは殿だった。


「当然、氷坂だけではなくこの国にも──私にも、何らかのお咎めがあろう。

言ったであろう? 此度の事件、全ての責を負うべきはこの私じゃ」


「お……お待ちを──」

ずっと地面で平伏していた海野喜左衛門が声を上げて、

「控えよ!」

殿がぴしゃりと言って、痩せた老人は「ははーっ」と叫んで再びぺったんこになった。


「よいか、円士郎。
これは先君としての、私からそちへの言葉じゃ。

一国の主として人の上に立つということは──国に何かあればその責任をとらねばならぬということじゃ。

忘れるな。それが、このように頭を下げてくれる者らへの務め」