恋口の切りかた

「本当に食えぬ方々だ。いつからこのようなことを考えていたのか……」

静かな笑みを湛えている菊田水右衛門と藤岡仕置家老を、覆面の下から眺めるようにして、青文は肩をすくめた。

私は青文がこの人たちに、別宅でも似たようなことを言っていたのを思い出した。



「この方々はね」

と、青文は菊田と藤岡に覆面を向けたまま言った。



「清十郎と氷坂家の企みを知って、過去の分岐点へもう一度戻ろうとしたのですよ」



過去の分岐点へ戻る──?



「そのために、家中に潜り込んだ隣国の手先や、その黒幕である隣国までもを利用しようとした。

まあ、さすがに清十郎の正体が盗賊であるということまで知っていたとは思えませんが、貴殿らにとっては斯様な些末事はどうでも良かったのでしょう」


青文はそう語って、


私は、彼の話を聞く藤岡と菊田の口元が吊り上がるのを見た。


「藤岡殿はこの国のため、そしておそらく菊田様は──殿のことを思って」

青文はそこで言葉を切って、殿のほうを窺うようにした。

それに気づいた殿が、「よい」と微笑んだ。

「ここへ来る途中、菊田殿より私も話を聞かされたが──私への気遣いならば不要じゃ、青文」

青文が黙って殿に頭を下げた。


それから青文は、殿の後ろに立っている藤岡と菊田の二人を見据えた。



「それで──どうなのですかな?

円士郎様は、貴殿らの目に適ったのですかな?」