「結城円士郎は、たった今死んだ」


唖然とする面々に、告げた。


「俺は、ただの円士郎だ」


それから、

「思い出したぜ」と言って、俺は腕の中でまん丸に見開いた目で俺を見ている留玖に微笑んだ。


「俺はワガママなんだってことをな」


手にした刀を構える。


「一人の女のために生きてみるのも悪くねえ」


「な──正気か……?」

帯刀があんぐりと口を開けて、

「どうする気だよ!?」

隼人が仰天した様子で目を剥いた。


「さあ、どうするかな」

俺は笑って、


「とりあえず──今はこいつと、ここから脱け出すことにするぜ」


留玖を抱く腕に力を込めてそう言って、


「それは、困りますなァ」

そんな声が飛び込んできたのは、この時だった。


声に続いて、声の主の菊田水右衛門が裏庭に現れて、

その後ろから藤岡と──


「円士郎……」


俺の名を口にしながら、砂倉左馬允がこちらに歩いてきた。


「殿──」

俺がそう呟いた途端、隼人たちが一斉に平伏して礼を取った。