恋口の切りかた

倒れた娘の手元に転がった短刀を、宗助は無表情に一瞥して、

「問題ない。刃に塗られていた烏頭(うず)の毒なら、この雨でとうに洗い流されてしまっている」

そう言った。


俺はほっとして、絶命している娘を見た。


「この娘は──」

帯刀が死体に歩み寄って傍らに屈み込み、脈を取って死んでいることを確かめながら戸惑った声を出して、


「屋敷から消えて宗助が追っていた、例の女中だな?」


俺は宗助に確認した。


「ああ。紅傘のおひさという盗賊だ」

宗助が首肯した。

「子供の頃におつるぎ様が斬った、紅傘一味の頭目の娘で──おつるぎ様への意趣返しのために、闇鴉の夜叉之助と組んで、円士郎様を狙ったようだ」

「なるほどな──」



留玖への、父親を殺された意趣返しで、俺を──か。



それは俺の身に何か起きることで、

彼女自身を傷つけることよりも、留玖を苦しめることができると、

この娘がそう考えていたからか……。



胸をえぐられるような痛みが広がった。



それほどに俺は、留玖に大切に思われている──。