恋口の切りかた

ふ、と血に濡れた口元でかすかに微笑んで、

夜叉之助が私を見つめたまま仰向けに倒れた。


泥水をはね散らかして、夜叉之助の体が地面に転がる。


ざあざあという雨音が耳に戻ってきた。


「留玖──!!」


円士郎が泣きそうな顔で駆け寄って、斬られた私の左腕をつかんで傷口を覗き込んだ。


「大丈夫……かすっただけだから……」

私は微笑んで、私よりずっと深い怪我をしている円士郎の肩を見上げた。

「私より……エンのほうこそ、その肩──」

着物の肩口は真っ赤に染まっている。


「大した奴だ、結城円士郎……」

聞こえた声に振り向くと、
仰向けのまま、夜叉之助が目だけをこちらに向けていた。

「心臓を狙った突きだったが──まさか、かわされて──あの刹那でこちらの急所を突いてくるとはな……」

夜叉之助は私たちから視線を外して、冬馬のいる部屋の障子のほうに目を動かした。


「あいつに斬りつけた時とは違って、手加減なしに本気で殺すつもりだったんだけどな……」


え──?


私は夜叉之助が口から放たれた言葉の意味を考えて──


ハッとして、冬馬を振り返った。