恋口の切りかた


 【剣】

私の目の前で夜叉之助の左手から小太刀が落ちて、足下の水たまりでばしゃんと音を立てた。



あの時──

円士郎が目を覆って退いて、
追いすがった夜叉之助が突きを繰り出して、

私は、

愛しい人が──円士郎が──心臓を貫かれたと思った。


頭が真っ白になって、

無我夢中で夜叉之助の背中に向かって刀を振るって、


けれど、

円士郎の体を貫通する刀は、心臓の位置に刺さっていなかった。


逆に胸を貫かれていた夜叉之助が、口から血を吐き出して「留玖……」と私の名を呼んで、こちらに手を伸ばしてきた。


私は涙が浮かんでいた目を大きく瞬いて──



夜叉之助の手が、刀を握る私の腕をつかんだ。


ぐいっと、物凄い力で引っ張られて、


「え……」


夜叉之助は、円士郎の肩を刺し貫いていた刀を引き抜いた。


円士郎がうめいて、よろめく。


その隙に後ろに退いて、
胸を貫く刃から逃れて、

夜叉之助は手にした刀を私に向けた。