恋口の切りかた

頭上で雷鳴が響き、雨が激しさを増して降り注いだ。

草履を脱ぎ捨てて、足下の感触を確かめながら足を動かし、夜叉之助との間合いを測る。


「言っておくが、貴様と引き分けた道場での試合を俺の実力だなどと思うなよ」

同様に足下を確かめるように足を動かして、夜叉之助が冷ややかに笑った。


「結城晴蔵には及ばずとも、真剣でやれば貴様など難なく斬り伏せることができる。

太平の世で平和ボケした武家のお坊ちゃんと、盗賊のこの俺とではくぐってきた修羅場の数が違う」


「へェ。そいつは楽しみだな」

俺も口の端を吊り上げた。


確かに、

以前、道端で出会い様に斬りつけて、俺のこの脇差しを飛ばし、堀に落としたのは意図してやったことだろう。

そんな真似ができるほどに実戦慣れした相手ということだ。


「だが、この俺も前にてめえとやり合った時より腕を上げたつもりだぜ」

朝晩、あの親父殿から直接剣の稽古を受けたのだ。

「それに──」

ぬかるんだ地面を蹴って、俺は一気に夜叉之助に斬りかかった。

「俺も、真剣の斬り合いのほうが得意なんだよ!」

雨粒を散らし、俺と夜叉之助の刀がぶつかって、硬質な鋼の音が雨の中に響いた。