「当たり前です」

弱いの其の一は憮然とした様子で言った。

「清十郎様の家来衆は確かに大勢、氷坂家から一緒に来たが……」

「そいつらも氷坂家から来た家来じゃなくて、盗賊一味だけどな」

俺は肩をすくめて、

「とにかく──今、この屋敷に討ち入った者は『殿の許しあって』動いている『番頭の』神崎帯刀とその手の者だ。

お前、もともとの海野家の家来の顔がわかるなら、そいつらに手を引くよう言ってくれねえか」

俺は「殿の許しあって」と「番頭の」を強調してそう言った。


「俺はこれから、家老になりすまして俺に謀反の濡れ衣を着せた盗賊一味の首領を討ち取って、その場で腹を切って己の失態の償いにすると殿に約束してきた。

俺の話が本当かどうかは、俺が死んだ後にでも殿や藤岡、菊田に訊けばわかる。

今は信じられないかもしれねえが……できるならば無駄な死人は出したくねーんだ。
頼む」


眉を寄せて俺の顔をしげしげと見つめている男に、俺はそう言って頭を下げて、


奥へと再び走り出そうとした時、


「お待ちを!」

慌てたように弱いの其の一が声を上げて呼び止めてきた。

「……今のお話、真ですか?」

真剣な眼差しでそう尋ねられて、俺は目を丸くした。