こんな場所で思わぬ人間と再会して、少しだけ懐かしく昔を思い出していたら、

「こ、この曲者!」

叫んで、再び斬りかかってくる弱いの其の一。


「誰が曲者だ」

俺はその腕を峰打ちにして刀を叩き落とし、
そのまま峰打ちでゴチンと、いつかのようにそいつの頭を叩いてやった。

「ぎゃっ」と、弱いの其の一は記憶の中と同じ悲鳴を上げた。

「俺は盗賊改めの結城円士郎だ」

「そ……そんなことはわかってますよ! 幼少の頃より手のつけられない問題児で、とうとう謀反人になった──」

「違ェよ」

ゴチン、と俺はもう一度そいつの頭を叩いて、

「曲者はここの海野清十郎のほうだ。あいつは氷坂の四男じゃねえ。盗賊の首領だった」

我ながら説得力のない言葉を一応口にしてみた。

「そのような妄言、誰が信じるか……!」

大人になっても弱いままだった其の一は、案の定そう言って俺を睨んだ。

「ま、今ここでてめえに信じてもらおうとは思ってねえからいいや」

あっさり引き下がると、弱いの其の一はやや怪訝そうな顔になる。

俺は無視して、気になったことを尋ねた。

「それより──ここにはもともとの海野家の家来もいるのか?」

屋敷に入ってから俺たちが斬ってきた──これだけの数の賊を屋敷の中に潜ませていたということは、元々いた海野家の家来は暇を出されたか殺されたか、残っていないものと思っていたのだが。