恋口の切りかた

「こ、この花、なんて名前かな」

よくわからないどきどきをごまかすように、
私はそんなことを言って。

「さあ? 花の名前はちょっとな……ああ、りつ殿ならよく知ってるんじゃねえか?」


りつ様。


不意に会話に上った人の名前に、

「おお、そうだ留玖。今宵(こよい)はりつのところで番をしろ。用心棒だ」

などと父上が言っていたことを思い出した。


庭に面した、離れの建物を見る。

「う、うん。じゃあ私、りつ様のところに行ってみるね」

太陽はまだかたむいたばかりで、
西日と呼ぶにも早い刻限だったが

私は漣太郎にそそくさとそう告げて、
まだどきどきしている胸をちょっと押さえて、

りつ様のいる離れに向かった。