「何よう!」

手の中にある刀をぎゅっと握った。

「盗賊なんてやってるのが悪いんでしょ……!」


ごろごろと雷鳴を轟(とどろ)かせる空に負けないように、私は精一杯の声でさけんだ。


「おひさちゃんのお父さんが、村を襲ったりしなければ良かったのに!」


そうすれば、私だって人殺しをしなくても良かったのに。

おひさが家族を失うことも、

私が家族を失うこともなかったのに──。


「おひさちゃんのお父さんたちが、村人を──私の弟を殺したのが悪いんだもん!」


土間の血だまりの中に、物のように転がった体を思い出して、私は涙がこみ上げそうになる。

彼は小さかった。

まだまだその先にたくさん人生の時間があるはずだった。


「弟は、なんにも悪くないのに……」


理不尽に命を奪われて……かわいそうな弟──。


「黙れ!」


おひさは悪鬼の形相(ぎょうそう)でどなって、


「お前たち、この娘を今すぐ殺してちょうだい!」


背後を振り返ってそんなことを言った。

ずっとそこにひそんでいたのか──庭木の影から、わらわらと十余人の盗賊が抜き身の刀を手にして現れる。


私は手にした刀を無意識にかまえ直して、


「この女を私の目の前で八つ裂きにして!」


おひさの声と同時に、盗賊たちが躍りかかってきた。