「おつるぎ様!」


よけながら、青文がさけんだ。


「俺には構わず、おつるぎ様は円士郎様のもとへ!」


私は一瞬だけ逡巡(しゅんじゅん)して──


うなずき、
身をひるがえして、
その場を後にする。


雨の降りしきる庭を突っ切って、更に奥へと進んで


「おつるぎ様」


かけられた声で、足を止めた。


「久しぶり」

そう言うのは、涼やかな少女の声で──


庭木の影から歩み出て、こちらに近づいてくる見知った娘の姿を認めて、



「おひさちゃん……」



私は震える声で、
目の前に現れた女の子の名を呼んだ。