恋口の切りかた

暗い空は、霧のように細やかな雨粒を落とし続けていて、

絹糸のような雨水はしっとりと染みこんで、着物を徐々に冷たく濡らしてゆく。


「おつるぎ様」

雨に煙る庭の中で、
槍をかまえて兵衛を見すえたまま、青文が私に小声でささやいた。


「今日は、大丈夫ですか」

「え?」

「こやつらの顔が、しっかりと見えていますか?」


言われて私は、あの夜と違って今は盗賊たちの姿をとらえることができていると気づいた。


「一人でも、大丈夫ですね?」

私の様子を見て念を押す青文に、私はうなずいた。


「はい。エンは絶対に私が助けます」

「頼みます」


金髪の若者が微笑して、

「先に行ってください。この者の相手は俺がします」

そう口にするのと同時に、


「そう来なくっちゃなァ!」

兵衛が吼(ほ)え、
着流しの裾がひるがえり、
雨糸を切り裂いて鎖鎌が放たれる。


青文の槍がそれを叩き落として、


「青文さん!」


槍がふさがった瞬間に、
鎌の軌跡を追うように投げつけられた「何か」が目に映り、私はさけんだ。