男の手が、こちらからは死角になっている背に回って──
着流しの袖がひるがえる。
ビュッと空気を切る音がする。
刀にとっても、
槍にとっても、
はるか間合いの外──
しかし、
回転しながら飛来した鋼の輝きを、青文が槍ではじいて
「よう。また会ったな、お二人さん」
長く伸びた鎖を引き、
「鎖鎌」と呼ばれるその特殊な武器を手元にたぐり寄せ
ぱしんと鎌柄を握って、
着流し姿の男は縁台から立ち上がった。
ゆらり、と、剣呑な空気をまとわりつかせてたたずむ男に、
私は手にした刀をかまえ直して、
「貴様が『鎖鎌の兵衛』か」
覆面家老の言葉に、男はニィッと唇をつり上げて笑った。



