恋口の切りかた

「なにコレ……?」

中に入ってすぐ、飛び込んできた光景に私は立ちつくした。


明らかに刀傷とは異なる傷をさらして倒れふす死体、
金縛りにあったようにその場に突っ立っている者、
あちこちえぐれて焦げた土、
壊れた屋根瓦……


いったい何をどうすれば、刀を手に討ち入ってこうなるのかサッパリわからなかった。


今も屋敷内のあちこちから人の怒声や刃物を打ち合う音が聞こえていて──


「おつるぎ様!」


青文の上げた鋭い声で私は我に返る。

建物の影から走り出てきた人相の悪い二人の侍が、刀を振りかざして襲いかかってくる。


手にしていた直槍で、青文が一人の胸を突いて仕留め、

私も刀を抜き放ちながら、一人を居合い斬りに斬りふせた。


家老家に仕える家来のような格好をしてはいるけれど、この人たち──

「闇鴉の一味でしょうね」

青文が言って、

「エンは……?」

私は必死に周囲を見渡した。

大好きな人の姿は視界の中には見当たらない。


「庭のほうへ回ってみましょう」

青文の提案にうなずいて、私たちは襲いかかってくる盗賊たちを斬りながら庭のほうへと走っていって──


ジョオン、という楽器の音が聞こえてきたのは、

手入れされた庭の中ほどまで足を進めた時だった。