【剣】
海野家の屋敷に向かいながら、
私は殿と菊田水右衛門のやりとりを思い出して、どういうことなのだろうと青文に尋ねて──
青文は、下手に隠すのは逆効果ですねと言って、この国の秘密と闇鴉の一味との因縁を教えてくれた。
「だから、左馬允様は菊田様のことを『父上』と呼んだんですか……!」
一味に殺された真木瀬からの養子ではなく、殿はそれを隠すための替え玉で
菊田水右衛門とは、実の親子だから──
私は衝撃を受けた。
ゴロゴロ、と空が鳴った。
見上げると、
晴れていた秋の空はいつの間にか灰色の雲に覆われていた。
「こいつは──降りそうだな」
私の横を走りながら、青文が小さくつぶやいて、
私たちが海野家の門の前にたどり着くと同時に、
鉛のような色の空からは、体温を奪う冷たい雨がぽつぽつと落ち始めた。
「派手に討ち入ったらしいねェ」
何をどうやったのか、壊されて穴が空き、開け放たれている分厚い木製の門扉をながめて青文が言った。
エン、死なないで──
私は暗い空を背負ってそびえ立つ長屋門を見上げて、ぎゅっと両手を握りしめて、
私と青文は、空いたままの門扉から、
盗賊の巣窟になっているという海野家の敷地内へと足を踏み入れた。



