恋口の切りかた

「くそ……!」

うめいた俺に覆面家老が歩み寄った。

「奴らなら『盗人宿』に向かったはずだ。この場は俺に任せて追え」

彼は小声でそう告げて──

「あんた、ひょっとして青文本人か?」

俺が尋ねると、
今の隙に入れ替わったのか、覆面頭巾からは「ご名答」という答えが返ってきた。

「ったく、与一の奴め、やたらと芝居がかった演技ばかりしやがって……」

青文は苦笑しているかのような声音で、完璧だった役者の大舞台に文句をつけて、
それからすぐに真剣な口調に戻った。

「急げ。俺もすぐに後から行く」

俺は頷いて、


「左馬允様!」


菊田のそばで、駕籠に寄りかかるようにして立ち尽くす左馬允に向き直り、声を張り上げた。


「今の者は、氷坂清十郎になりすまし、家中に潜り込んだ盗賊の首領にございます!

私は奴に脇差しを奪われ、謀反人に仕立て上げられました。

父が申したとおり武士にあるまじき失態ですが──断じて、私は殿のお命を狙ってはおりません!


秋山隼人もまた、あの夜叉之助なる賊に陥れられました。

彼が先の事件の捕り物で盗賊の一味を斬った故の報復。
謀反に荷担したとなどという話は事実無根にございます!」


俺は親父殿から受け取った脇差しを鞘ごと引き抜いてかかげ持ち、左馬允の前で片膝を折った。


「全ては、賊に我が刀を奪われ、その刃にて殿のお命を狙われるという私の失態が招いたこと。

罪に問われるべきは私であり、秋山にはなんら落ち度はございません!」


「円士郎様……?」

隼人の驚いたような声が聞こえた。