完全に血の気が失せた顔で、冬馬は親父殿を見つめた。
「何故です!?
そんな私を、どうして引き取って我が子になど……!」
「敵対者は、一族郎党根絶やしにするべき──か?」
親父殿は冬馬の視線を受け止めて、
「そういう選択もまた、戦国の世から行われてはきたがな。
儂は、目の前で己によって親を殺された幼子の命までをとろうとは思わん。
何より、お前は人として前を向いて生きようとしておった。
冬馬、お前を我が子として今日まで育ててきたこと、儂も後悔はしておらんぞ」
そう語って、微笑んだ。
蝋燭の灯火を映す冬馬の双眸が揺らめいて、
涙をこらえるかのように冬馬がうつむき、両の拳を握りしめた。
その横で、俺はともすれば左馬允のいる地位に自分が座っていたかもしれないのだということを思った。
夜叉之助と羅刹丸。
この二人の辿ったその後の運命が、十一年前に大きく分かたれたように、
俺と左馬允の運命もまた──
己の知らぬところで、そのような人生の分岐点があったとは、これまで生きてきて全く思いもしなかった。
「方や一国の殿様、方や謀反人──か」
もしも十一年前に別の選択が為されていたならば──俺も今、このように死に直面することもなかったのだろうか……。
「人間の運命ってのは……本当にわからねえもんだよな」
菊田水右衛門が口にした言葉が耳の奥で蘇り、俺は小さく呟いた。
「何故です!?
そんな私を、どうして引き取って我が子になど……!」
「敵対者は、一族郎党根絶やしにするべき──か?」
親父殿は冬馬の視線を受け止めて、
「そういう選択もまた、戦国の世から行われてはきたがな。
儂は、目の前で己によって親を殺された幼子の命までをとろうとは思わん。
何より、お前は人として前を向いて生きようとしておった。
冬馬、お前を我が子として今日まで育ててきたこと、儂も後悔はしておらんぞ」
そう語って、微笑んだ。
蝋燭の灯火を映す冬馬の双眸が揺らめいて、
涙をこらえるかのように冬馬がうつむき、両の拳を握りしめた。
その横で、俺はともすれば左馬允のいる地位に自分が座っていたかもしれないのだということを思った。
夜叉之助と羅刹丸。
この二人の辿ったその後の運命が、十一年前に大きく分かたれたように、
俺と左馬允の運命もまた──
己の知らぬところで、そのような人生の分岐点があったとは、これまで生きてきて全く思いもしなかった。
「方や一国の殿様、方や謀反人──か」
もしも十一年前に別の選択が為されていたならば──俺も今、このように死に直面することもなかったのだろうか……。
「人間の運命ってのは……本当にわからねえもんだよな」
菊田水右衛門が口にした言葉が耳の奥で蘇り、俺は小さく呟いた。



