恋口の切りかた

「つまり、その賊というのが──」

食い入るように青文と親父殿を見つめて話を聞いていた冬馬が、強ばった顔で口を開いた。


「闇鴉の六郎太率いる盗賊一味だったのですね……」


真っ青になっている冬馬に、親父殿が「そうだ」と言った。


「実際に幼い殿を襲ったのは一味の下っ端で、ただ身分の高い武家の子供とその一行と思ってのことだったらしいがな。

幸か不幸か──討伐に当たった時に聞き出した話では、一味の連中もまさか一国の主君だとは理解できていなかったようだ」


「それを聞いて、私はこの国の着座家以上の家格を持つ家の当主のみに、

『盗賊に、先法御三家の嫡男が殺された』

というニセの真実を、武家の権威を失墜させるため外部に漏らしてはならぬ秘密として伝えた。

盗賊一味がこの国で壊滅に近い状況に陥ったという話は、すぐに裏の世界に広まります。当然その理由も知ろうとする者が出る。

表の世界はともかく、裏の世界に対して完全に情報が漏れぬよう食い止めるのは難しいが──本当に隠したい秘密の上に、いずれどこからか漏れたとしても構わぬ嘘の秘密を被せることで、人心というのは欺くことができる。

そしてどうやら、それは有効に作用したようだ」


元盗賊の御家老は何やら意味ありげにそう言った。

聞いていた親父殿が苦笑いする。


「伊羽殿が、まだ十五の子供であった当時からそのように『裏の世界』にどうして通じていたのかは気になっておったが──まあ、問わずにおこう」


親父殿も、青文が盗賊だったという過去までは知らないということのようだった。


「それでは私は──」


冬馬が震える声を出した。


「この国の主君を殺した大罪人たちの、生き残りということではないですか……!」