恋口の切りかた

青文はけらけらと笑って、

「実の父親からまで猛反対され、
身分が高いにも関わらず、ここまで家臣全員からケチョンケチョンにけなされる御仁というのは──

いったいどういう人物なのかと、この時から私は貴殿に興味を持ったワケですが」


家臣全員からケチョンケチョンにけなされたのかよ、俺!


あわれな過去の自分に心の中で涙を流しつつ、俺は再びヘコんだ。


「そして同時に、結城晴蔵様という人物が真に信頼できる御方だとも思いました。

ご自分の子が主君の座に着けば、この国での最高の権力を手にすることができるにも関わらず──家中のことを真剣に案じてそれに反対なさるとは、なかなかできることではございません」


「当たり前だ。刀丸と出会う前の漣太郎は──手の着けられない問題児で、とてもではないが一国の主として擁立できるような子供ではなかったからな」


青文が力説し、
親父殿が神妙な顔で言って、

俺は更に完膚無きまでに打ちのめされ、


「一番の適任だと思っていた少年が使えぬと判明して──」


使えぬ、という青文の言葉がグッサリと突き刺さった。


「仕方なく、私が次の候補として考えたのが、別の先法御三家の嫡男である菊田家の御子息──つまり今の殿です」


くずおれている俺には構わずに、青文は淡々と続けた。


「菊田水右衛門様もまた先々君の弟君であり、御子息は先君の従兄弟に当たる。
砂倉家の血筋を有した御方だ。

ただし──当時、御年は既に十三。幕府を欺けるかは疑問でした」


もっとも、実際に菊田様に連れられて現れた子供を目にして、その心配はないと判明しましたがね、と青文は言った。