恋口の切りかた

全く想像もしていなかったところで自分の名前が飛び出し、思わず頓狂な声を上げた俺を見て、
青文はクックと肩を震わせた。


「当然でしょう。
貴殿は先法御三家筆頭家の御嫡男であり、先君の甥に当たる。

ご自覚はないかもしれませんが、砂倉家の正統な血筋を持つ貴殿は、この国の主君となる条件を十分に満たしているのですよ。

しかも死んだ殿とは年も近く、背格好も同じ──となれば、当時のこの家中の子供の中で、幕府を欺くにはもっとも適した者だった」


青文はそう言ってから、はああ、と深い溜息を吐いた。


「貴殿と面識がなく、結城漣太郎という少年がどういう人間かを知らない私は、まあ理屈で考えて当然の如くにそう思ったのですが」


青文は肩をすくめた。


「提案した瞬間に、晴蔵様を含めた全ての御仁から人格に問題ありとして猛反対を受け、断念するに至りました」


「…………」


全ての御仁から猛反対されたって……


俺っていったい……


己が昔から他人の目にどう映ってきたのかを改めて認識させられて、俺は一人でヘコんだ。