恋口の切りかた

では──

十一年前に親父の命で切腹させられた者たちというのは……


「幼い殿の供をしていた神崎帯刀の兄が切腹させられた理由は──これか」


事件の口封じのために……


「まあ、口封じと言うと身も蓋もないがな、
警護の任に当たっていながら、武士として主君を守りきれなかった者にとっては、やむを得ん処罰として儂が命じた」

親父殿がごりごりと顎を擦りながら言って、

「私には、当時も──そして未だに理解できませんが……
主君を目の前で賊に殺されておめおめと生きて返ってきたなど、武士にとっては恥なのでしょう?」

冷ややかに口にした青文に苦笑した。

「そして、主君を殺した賊を全て討ち滅ぼすのもまた──武士としては当然の道理と思いましたので」

武家社会の外で生まれ育った侍はそんな風に語った。


己には理解できないと言いながら、

理不尽に口封じを行ったわけではなく、
それは武家社会の道理にも適っている。

確かに、親父殿や藤岡たちが伊羽青文という人間に一目置いたのも頷ける。


「そして私は幕府を欺き、幼い殿が死んだという事実そのものをなかったことにした」


青文はそんな風に、驚くべき策謀を打ち明けた。


「私が注目したのは、末期養子として家督を継いで間もなかった真木瀬家の御子息は、まだ公方様へのお目見えを果たしていなかったという事実です。

顔が割れていないのであれば──殺害されたこと自体を隠蔽して、替え玉を用意すればいい。

その替え玉として、私が推挙した人間こそ、

当時数えで八つであり、殺された殿とは一つしか年の違わなかった──」


青文は可笑しそうにクスクスと笑って、

蝋燭の灯りの中で、白い指をこの俺へと突きつけた。


「──円士郎様、貴殿ですよ」


「はァっ!?」