恋口の切りかた

脳裏に閃くものがあった。

「まさか──帯刀の兄の切腹というのも……」

俺が思わず口にすると、

「鋭いですな」

青文からは俺の推理が正しいことを示す言葉が返ってきた。


「今さら悔やんでも致し方ないが……全ては十一年前、奈津の兄上である先君が江戸にて、他の家中の家臣に斬殺されたことから始まっておるのだ」

と、親父殿が口を開いた。

「殿には御子がおらず、昔ならばこの砂倉家は改易となっていたところであったが……今は幕府によって末期養子というものが認められておる(*)。

儂らはすぐに殿の死の事実を伏せ、当時九つになる真木瀬家の子を末期の養子として立てた上で、太刀傷が悪化して亡くなったと発表した」

「それは──青文がやったと言われてるんじゃ……」

俺は口をはさんだ。

この金髪緑眼の青年が、家中に認められるきっかけとなったと言われていることだった。

「この程度の判断、さすがに儂らとて考えついたということだ」

親父殿は笑って、以前役宅で帯刀たちに俺が言った疑念と同じ内容を口にして──

しかしすぐにその表情が曇った。


「だが、その直後に──事件は起きた」


親父殿は溜息を吐いて、


「遠出中、幼い殿が賊に襲われて殺されたのだ」


と言った。



(*末期養子:まつごようし。江戸時代初期には禁止されていたが、この時代は、世継ぎがいない武家の当主が危篤状態になった場合、お家断絶を防ぐために緊急に養子をとることが許されていた)