【円】
先法御三家の一つ真木瀬家から先代の養子となったはずの左馬允が、
「父上……」
菊田水右衛門をそう呼んで、
俺はあの日、伊羽家の屋敷の一室で、
ここにいる偽物ではなく本物の青文から聞かされた──この国の真実を思い浮かべた。
あの時、俺と冬馬に厳重に口止めをした上で、
金髪の御家老は、
「円士郎様、十一年前に闇鴉の一味によって殺されたのは、菊田水右衛門様の御子息ではありません」
そう言った後、こう続けたのだった。
「十一年前にこの国で起きた、あってはならない事件、
盗賊『闇鴉』の一味が殺した者は菊田家の嫡男ではなく──
こともあろうか、
末期養子として家督を継いだ直後の、幼いこの国の主君だったのですよ」
──と。



