恋口の切りかた

「な──どういうことだよ!?」


これには円士郎も仰天した様子になった。

私も固唾を呑んで、本物そっくりの偽物の御家老を見つめて、


「私にも、藤岡殿たちの真意だけが最後までわからなかったのだがな。

秋山隼人のおかげで、お二方がどういうおつもりなのかようやく知ることができたよ」


覆面の下からはそんな言葉が飛び出してきた。


「えっ、俺?」と隼人が自分を指さして間の抜けた声を出した。


「この国を本気でつぶしたいならば──秋山には切腹を命じるべきではなかった」


夜叉之助と呼ばれた青年が、不可解そうに眉を寄せた。

「何だと……?」

「秋山を生かしていたほうが、この国はもっと簡単につぶせたんだ」

偽家老はそう言って、覆面に隠れて見えない目を白髪の老人に向け、それから殿のそばに跪いた菊田水右衛門を振り返った。


「だが、このお二人はそれをしなかった。
だから──私も確信できた。

夜叉之助、お前は何も知らないのだとな」


そう語る覆面頭巾の男を、夜叉之助はわけがわからないという様子で睨んだ。


「俺が何を知らないというのだ?」

「この国と闇鴉の一味の真実を、だ。
十一年前に、何があったのか──その真相をな」

「なに?」

「それをお前が知らぬことはそのまま──この人たちがこの国と殿を裏切ってはいないということを意味する」


覆面頭巾はそんなよくわからないことを言って、


「私を……裏切っていない……?」

殿が菊田を見下ろして、ぼう然とした口調で訊いた。

「どうして……?」