恋口の切りかた

「成る程……そういうことか……」

菊田が呟いて、顎を軽く振った。


途端に、

これまで私たちを囲むようにしていた者が一斉に、清十郎──夜叉之助に向き直った。


菊田水右衛門はそのまま私たちのほうに歩み寄ってきて、

身構える円士郎の横を擦り抜けて、立ち尽くす殿の前で膝を折った。


「ご無事で何より」

そう言って、相変わらず気怠そうな瞳で殿を見上げる菊田を、殿は見開いた目でまじまじと見つめた。


「お前の負けだ、夜叉之助」

と、覆面家老が盗賊闇鴉の頭目だという若者に言った。


「何ィ……!?」

「まだわからないのか」


歯ぎしりする青年に、
偽物の覆面家老は、あたかも青文本人の言葉のように、


「評定役の他の者はどうだか知らぬが──少なくとも藤岡殿と菊田様、この人たちは最初からお前と組んではいない」


驚くべき内容を告げた。