恋口の切りかた

「勘違いされては困るのォ。
儂らは、殿の別宅にて騒ぎが起きておると聞いて駆けつけたまで」

藤岡はそんなセリフを口にして、

「それよりも、伊羽殿や円士郎殿が申されたこと、気になりますなァ。
盗賊がこの国に潜り込んでそのような真似をしようとしていたならば、由々しき事態じゃ。

のう、海野殿」

にやっと笑って、白い眉を片方だけ跳ね上げて清十郎を見た。


「この期に及んで──手の平を返すのか」

清十郎が愕然とした表情になって、



刹那、

この隙を突いて間合いを詰め、
斬りつけた円士郎の剣が

清十郎の着物の前を裂いた。



切り裂かれた着物がはらりと垂れ下がって、



露わになった胸元には、





漆黒の「三本足のカラスの彫り物」があった。





私は信じられない思いで、それを眺めて──



菊田と藤岡の目つきが変わった。

「その彫り物は──」

「覚えがありましょう」

青文──に化けた与一が、覆面の下から言った。

「十一年前、我々に仇なした盗賊『闇鴉』の一味の証である──八咫烏の入れ墨ですよ」

偽物の覆面御家老は、裂けた着物を押さえて奥歯を鳴らす若者を指さし、

「この者は十一年前の生き残り──今の一味を率いる頭目、闇鴉の夜叉之助です」

と言い放った。