好きな人と離ればなれになるつらさは身に染みてわかる。

今の殿の気持ちを考えると、私も気が沈んだ。


青文もいない。
円士郎もいない。

隼人は……あの優しい狐目の青年は……切腹させられてしまって……

今、この城中で
清十郎たちのたくらみを知っているのは私だけだ。


エンのためにも、私がしっかりしないといけないんだ……!


そう思って自分を奮い立たせようとしたけれど、どうしようもなく心細くて──



そして、
円士郎の消息がわからないまま、九月に入って──事件は起きた。