恋口の切りかた

冬馬があっと声を上げて目を見開いた。


「いいのかよ?」

俺は周囲を見回して言った。

青文がこれまで厳重に自らの姿を隠し、屋敷の者の前でも覆面をつけていることは知っている。

「ご心配なく。
ここは宮川中と亜鳥に命じて、決して人が立ち入らぬようにしてありますから」

橙色の灯りに浮かび上がった白い顔は、そう言って笑って、

「今ここには、私の素顔よりも目撃されてはまずい顔ぶれがそろっていますからな。
それに冬馬殿にはこの顔、今さら隠す意味もないでしょう」

確かに、と俺は肩をすくめて、

親父殿と一緒に現れた、予想外の顔を見上げた。


「円士郎、儂にはお前と話すことなどもはやない。

お前が消えてすぐ、お前と何としても話をしたいと言ってきたのは冬馬でな」


親父殿は俺と冬馬を見比べてそう言って、

立ち尽くしていた冬馬は、のろのろと座敷の中に入って勧められた席に着いた。


「儂はただの立ち合いだ」


どういうことかと義弟を見つめる俺に、冬馬は思い詰めた眼差しを向けた。


「兄上、兄上は海野清十郎に一矢報いた後、自刃して果てるおつもりでしょう」


冬馬は決意を固めた様子で、


「どうか、私もご一緒させてください」

などと言い出した。


「な──」

俺はあんぐりと口を開けて、


「何言ってんだ、てめェ!」

思わず目を剥いた。