恋口の切りかた

伊羽家の座敷で、ほとんど軟禁状態で過ごし──

親父殿を交えた話の席が整ったのは、八月に入ってからだった。


八月初旬の蒸し暑い夜、

「まさか晴蔵様にまで古井戸の隠し通路を使っていただくことになるとは──申し訳ありませんな」

青文は城代家老の口調で言って、親父殿を俺のいる座敷に招き入れ──


「な──冬馬!? なんでお前まで!?」


親父殿に続いて現れた人物を見て、俺は声を上げた。


「兄上……」

蝋燭の灯火が作り出す光の輪の中で、冬馬は俺を見て声を震わせて、

「まずは元気そうでなにより、とでも言っておくか」

親父殿は皮肉としか聞こえないそんな言葉を寄越して座った。


「冬馬殿もどうぞ」

と青文が座るように勧めて、冬馬が怪訝そうに覆面頭巾に隠された家老の顔を見つめた。


青文は今、口調こそ城代家老の伊羽青文のものだが、声音は変えておらず、遊水として冬馬の前に姿を見せていた時のままだ。

青文が冬馬の視線に気づいて、

「ああ──結城家に出入りしていた節は、どうも」

覆面を剥ぎ取って、金髪緑眼の美しい素顔をさらした。