恋口の切りかた


 【剣】

「エンは……エンはあんなこと、するわけない!」

脇差しが見つかってすぐ、殿や城に呼ばれた父上の前で私は必死に訴えた。

「あれは円士郎じゃない! もしも円士郎だったら……覆面をしていたって、私にはすぐにわかります」

たとえ会わない日々が続いたとしても──愛しい人の姿を忘れるはずがない。

彼の刀の構え方、
身のこなし、
小さな仕草の一つに至るまで、

幼い日からずっと近くで見続けてきたのだ。


昨日の夜の人影は、円士郎ではなかった──。

円士郎ではなくて──



けれど、

見覚えがあった。



脇差しを改めた父上は、それが円士郎のものであることを認めて、
泣きはらした私の顔を眺めた。

「だが留玖、お前が見た人影は二刀流だったそうだな?」

「そうです。
でもあれは円士郎ではなく──」


暗闇で一瞬だけだけれど、あれは──

私はぶるっと震える。



「海野清十郎でした」