恋口の切りかた

どのみち切腹は免れないだろう。

俺も武士だ、堂々と腹を切ってやる。


だが──



その夜、俺は監禁されていた自室からそっと抜け出して、

暗い庭で、向かいからやって来た人影とばったりと出くわした。

「兄上……!」

冬馬だった。

俺は腰の刀に手をかけた。

「見逃せ」と告げた。

「謀反なんて俺はやってねえ。海野清十郎の野郎にハメられたんだ」



冗談じゃねえ……!


まんまと陥れられて、謀反の汚名を着せられたまま引き下がるなど──絶対にできなかった。



「な──」

うろたえた様子を見せる冬馬に、

「勘違いすんな。命惜しさに逃げる気なんてねえよ」

俺は押し殺した声で言った。

「いつでも腹を切る覚悟くらいできてる。しかし今は──やることがある」


その前に何としても、

俺と隼人の誇りを貶めた海野清十郎とのケリだけはつける。


そう心に誓って、



「悪いな、冬馬。結城家は、お前に任せる──」

俺はそう言い残し、立ち尽くす冬馬をその場に置いて


この夜、

屋敷から姿を消した。