恋口の切りかた

夜半過ぎ、激しい物音と人の声で私は目を覚ました。

どこか離れた部屋から、金属の激しくぶつかる音が届いて──


刀同士が合わさった時の音だ……!


聞いた瞬間にそうわかって、寝所を飛び出した。


「おつるぎ様! 曲者が──!」

廊下で、物音のほうへ走っていく別式女の人と会って、

「刀を!」

私は後について走りながらそう叫んだ。

別式女の人は、側室の私に刀を持たせて騒動のただ中に連れて行くことをためらったのか、一瞬だけ迷う素振りを見せた。

しかし何度も手合わせを繰り返した私の剣の腕を信頼してくれたということだろう。

すぐに私に長刀を渡し、自身は小太刀を抜き放った。


「この先は……まさか──初姫様のお部屋に──」


別式女が口にするのを聞いて、私はギクリとした。


初姫様のお部屋……


そこには──殿もいるのではないかという考えが脳裏に浮かんだ。


私の予感は的中し、

別式女と共に、戸を大きく開け放って踏み込んだ先で私を待っていたのは──


床(とこ)の上で座り込んだまま震える初姫様と、

それを庇うように寝間着姿で刀を構えた殿の姿だった。


そして、


二人に向かって、両手にぎらつく二本の刃を構えた人影があった。