恋口の切りかた

宗助にいったい何があったのか──

これまでどこにいたのか──


何もわからなかった。


「あああ……宗助兄さまを、こんな目に遭わせるなんてぇええ──」

鬼之介の長屋から駆けつけた霊子は、
自分の着物の袖を引きちぎらんばかりに噛みながら、夏場だと言うのに青白い顔をますます真っ青にした。

「ただ者の仕業ではござらん……!」

宗助と同郷のくノ一はわなわなと身を震わせた。

「うう、兄さまぁ……おいたわしやぁああ……」

怨念のこもった声でそう言って、よよよ……と泣き崩れるこの幽霊女の言うとおり、

優れた忍である宗助がこんな状態になるというのは、ただごとではない気がした。


決して致命傷にはならぬように、苦痛を与える目的でつけられた無惨な傷の数々。


宗助はおひさという女を追っていた。

それがこうなって戻ってきたというのは──どういうことなのだろうか。




宗助の意識が戻るのをひたすら待つ中、

そんな俺自身のほうに、とんでもない事態が降りかかってきたのは、

隼人が再び宗助の様子を見に屋敷を訪れた、七月下旬の晴れた日だった。