恋口の切りかた

俺は絶句する。


「その後、神崎殿が跡目を継いでるんだけど、神崎家は減俸処分を受けて番頭から町方に役目を変えられてんだよ」


硬直した俺の前で、隼人は渋い顔でそう語って──


俺は息を呑んだ。


「神崎家はもともと──番頭の家だったのか?」


それが──町方与力に?

愕然とする。


帯刀の奴、そんなこと一言も……


「何の咎(とが)あってのことだ?」

「うーん……それが、家中でも秘密裏に処理されてるみたいで、よくわかんねーんだけどよ。
どうも、殿様の遠出中に何か無礼なことをやらかしちまったらしいな」

「殿様?」

「真木瀬から砂倉家の養子に入って家督を継いだばかりの──九歳の幼い今の殿、左馬允様だよ。

当時、切腹を言い渡された者というのは皆、その直前に遠出の供をした者だった」


つまり、何があったかはわからねえが……


「うちの親父殿が、帯刀の兄を切腹させた……ってことか?」


隼人は気まずそうに頷いた。


「気になることってのはそれだ。
事件の捜査とは関係なさそうだけど、一応伝えておいたほうがいいかと思って。
あんた、それ知ってて神崎殿を自分の部下にした……なんてことは……」

「いや。初耳だ。今知った」

「だよな」

ふうっと、隼人は首を振りながら大きく息を吐いた。

「このことは、神崎殿も隠してたみてえだし……俺も自分で調べてなけりゃ知らなかったよ」