恋口の切りかた


それにしても、



留玖のやつもなんで急に

女ものの着物がいやだとか言い出したんだ?


支度ができたと中間(*)に知らされて、
ぬれネズミの俺は湯殿(*)に向かいながら首をひねった。


あいつの考えてることも時々よくわかんねーよなァ……。


びしょびしょの着物を脱いで、
タライに張られた湯を使って……

俺はそのままタライの中に入る。

うーん、
こういうとき、子供って身体が小さくてお得だ。


過去にこれをやって中でさわいで
何度かタライの底をぶち抜いてしかられたこともあるのだが、

湯船の気分を味わえるので俺のお気に入りだ。


身体も温まってきてタライから出て、

さて最後は湯を頭からかぶって終わりにするかな、とか考えていると──


「レンちゃん……?」

「うおわァッ!?」


いきなり背後から声をかけられて
俺はタライに再び飛び込んだ。



(*中間:武家の使用人。家の中の雑用係)
(*湯殿:ここでは湯船のある風呂やサウナではなく、大きなタライに湯を張って使う形式の湯殿。火事の危険があるので、結城家には湯船はないという設定)