恋口の切りかた

「御家老から直々に釘を刺されたことなんかに首つっこむワケねーだろ!」

「え? だってよ……」

「調べてたのは、闇鴉の一味がこの城下で壊滅寸前まで追い込まれたって事件のほうだよ」

「あ、そうか……」

その事件も十年前に起きてたんだったな。

「確か──青文が前に、うちの親父がやったとか言ってやがったな」

「そこだよ」

隼人は身を乗り出して声を潜めた。

「あんた、晴蔵様からその事件について何か聞いてるか?」

「いや……そう言えば、親父の口からその事件について聞いたことはねえけど」

隼人は押し黙った。

「どうかしたのか?」

俺も扇子を動かす手を止めて、声を低くする。


隼人は周囲に素早く視線を送ってから口を開いた。


「いくら結城晴蔵様が、当時から家中きっての剣の達人だったからって──たかだか盗賊の討伐に、なんで町奉行所の人間じゃなくて、既に家督を継いで国の上に立ってた御仁が直々に乗り出すんだよ?

十年前だし晴蔵様もまだ若いっつっても、なんか妙じゃねえ?」


俺は何とも判断がつかずに曖昧に笑った。

「まあ、あの親父のことだからな……」

「俺は少し気になって、どんな経緯があったのか当時の町奉行所の記録を調べてみたんだよ。
まあ、盗賊の中によっぽど腕の立つ者がいたとか……そんな理由で、町奉行から依頼でもあったのかと、そう思ってたんだけど……」

「違ったのか?」

「逆だった」

と、隼人は硬い表情で言った。